「違いを認めて、共に生きる」。 人間の脳が逆らえない3つの本能。

 ここ数ヶ月、「支援的に生きる」というテーマがずっと頭から離れませんでした。近代の資本主義が繁栄してきたほとんどの時期において、成果は「奪い取る(テイク)」事によって得られると信じられてきた感があります。しかし、その行為には必ず限界が訪れます。実は「与える(ギブ)」という行為こそが、限りある資源を有効に活用し、緩やかな成長を促す原動力となるのではないか、と。

 

 そんなとりとめのない話題を、とある席で漏らしたところ、同席していた女性からこんな発言が飛び出しました。「それは、人間の脳の本能に従った、真っ当な考え方だと思いますよ」と。その女性に教えて頂いた本が、『脳に悪い7つの習慣(林成之著/幻冬舎新書刊)』でした。

 

 著者の林先生は、脳科学のエキスパート。かつては北京オリンピックの競泳チームに『勝負脳』の奥義を施して、たくさんの金メダルを日本にもたらしました。救急医療の分野においては、『脳低温療法』を開発して、助からないとされてきた救急患者さんの4割を救った医師としても有名です。

 

 その林先生曰く、人間の脳神経細胞が持つ本能は、たったの3つなんだとか。それは「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」というもの。この3つの本能が、人間を社会的動物へと進化させ、複雑なシステムを構築させたのだと。「生きたい」「知りたい」から科学を、「知りたい」「仲間になりたい」から文化を、そして「生きたい」「仲間になりたい」から宗教を産み出したのだそうです。

 

 「仲間になりたい」。この定義には、「貢献したい」「役に立ちたい」という想いが含まれています。「支援的に生きる」ことは、この定義を満たす人間らしい最良の生き方なのでしょう。先生は、こうも仰っています。「違いを認めて、共に生きる」ことこそ、人間の脳が最も望んでいることなのだと。