今回は、ベルズシステム(株)の小野寺隆氏にご登壇頂きました。国立の研究機関主宰のもと、人工知能ビジネスの研究推進リーダーを務めておられる小野寺氏。今年、画期的な質問回答人工知能『ロアンナ』をリリースしました。
その開発動機には、大きな期待を掛けながら散々な失敗のうちに幕を閉じた、ある事業の存在が関与していました。サービスに対するユーザーからの質問を想定し、FAQ(よくある質問と回答集)を充実させて臨みましたが、なんと想定外の事態が。ほとんどのユーザーがFAQを素通りし、電話で対応を求めたのです。少人数で事業を運営していた氏にとって、そこに人員と時間を割かれたのは大きな痛手でした。事業はわずか一年半で閉鎖に追い込まれます。
なぜお客様はFAQを見てくれなかったのだろう。やはり音声での対応が楽なのだろうか。キーワード検索を主軸としつつ、音声検索も備えたFAQサービスを、人工知能技術を介在させて作れないか。その開発の成果が実り、『ロアンナ』は誕生したのです。
しかし、いざ取引先に提案すると、さほどの関心も得られず、氏は焦ります。そこからサービスの「捉え方」や「見せ方」を徹底的に追及し、表現に盛り込んでいったところ、取引先の反応は急激に熱を帯びてきました。改良されたプレゼン内容には「人工知能を人材として登用し、適材適所で共存関係を築いていく」イメージが取り入れられ、導入利点がより明確になったのです。まさに「ゲームチェンジ」を引き起こした現象と云えるでしょう。
質問回答業務の人工知能活用に関しては、大手企業同士が、多額の開発費用を投じて競合している分野です。その中に在って、今まさに『ロアンナ』は、市場のゲームに「敗者のルール」を投じようとしています。「人工知能か人間か」ではなく、「人工知能と人間との共存」という発想によって。
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