50歳になり、まもなく一年が経過しようとしていますが、つくづく50代前半というのは、微妙に悩ましい年頃だと思います。
今迄の経験を活かし、まだやれると意気込むものの、若い頃の無理は利かないという自覚もある。成し遂げたい事や生涯現役に向けての下地作り等、課題は山積していますが、がむしゃらに働ける時間は、あと十年程度かもしれません。先の見通しが見えているような、見えないような。そんな戸惑いを感じることも、よくあります。
悶々とした気持ちを抱えている時に、『草原の椅子(成島出監督)』という5年前公開の映画に出逢いました。原作は宮本輝の小説です。
カメラ機器メーカーの営業部長遠間(佐藤浩市)は50歳。取引先の社長で同年齢の富樫(西村雅彦)と、あるトラブルがきっかけで急激に親しくなります。
会社では中間管理職の憂き目に合い、少々お疲れ気味の遠間。家庭でも、独り身で育てた大学生の娘の交流関係が気になって仕方ありません。一方の富樫も、拠点は関西にあるものの、首都圏に出したお店を軌道に乗せるため、単身赴任中。厳しい経営状況に悩む日々が続いています。
ある日、遠間は陶器のお店をひとりで営む女性、貴志子(吉瀬美智子)に一目惚れします。若い貴志子ですが、実は過去につらい結婚生活を経験していました。
見えない明日と孤独感。見掛けは立派な大人だが、迷いが尽きず停滞している毎日の中で、自分の所在さえ信じ切れずにいる。そんな三人の前に、親に捨てられた4歳の男の子、圭輔が現れます。
親の虐待が原因で、誰に対しても心を閉ざしてしまった圭輔を、本気で心配する大人たち。同時に、知らぬ間に立ちすくんでいる自分自身の現状にも気付くのです。遠間は、自分や圭輔の止まった時間を再び前に進めるため、冒険の旅に出ることを決心します。
遠間が旅先に選んだのは、パキスタンのフンザという小さな村でした。そこに住む予言者の長老に「瞳のなかの星」を見てもらい、人生の新たな糧を得ることが目的でした。想いを抱く旅は、停滞していた人生を動かす、大きな契機になり得るのかもしれませんね。
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