「ひと一倍の人想い」が産み育てた 博多名物明太子と、その創業哲学。

 去る11日、全国公開を18日に控えた映画『めんたいぴりり』の福岡先行上映会に参加してきました。出演の博多華丸さんや富田靖子さんら役者陣、監督の江口カンさんの舞台挨拶も兼ねており、福岡市内近郊の映画館5館において、丸一日掛けて行われました。 

僕は、最終回のイオンシネマ福岡にて参加しましたが、会場は満席で、凄い熱気に満ちていました。

 

 『めんたいぴりり』は、2013年にテレビ西日本が製作した連続ドラマで、全国放送されました。フィクションですが、華丸さん演じる主人公、海野俊之のモデルは、博多明太子を産み出した『味の明太子ふくや』の創業者、川原俊夫氏です。原作として『明太子をつくった男 ふくや創業者・川原俊夫の人生と経営(川原健著/海鳥社)』がクレジットされています。著者の川原健氏は俊夫氏のご長男で、三代目の社長を担われました。ちなみに現在の五代目社長は俊夫氏の孫にあたる武浩氏です。 

 

 物語は、主人公の俊之少年と将来の伴侶である千代子が生まれ育った街、昭和初期の朝鮮釜山から始まります。やがて悲惨な戦争の渦に巻き込まれ、敗戦を迎えたふたりは、大空襲で荒れ野となった博多中洲に小さな雑貨店『ふくのや』を開業。俊之は、戦地で死んでいった仲間を想い、「生き残ったこの命を無駄にはしない。多くの民に十分な食を与える・・・これを自分の天職としよう」と誓います。俊之は、釜山でよく食べた大好物のお惣菜『ミョンテ(明太)』の味の記憶を頼りにして、安くて美味しい日常使いのお惣菜『明太子』の開発に没頭していきます。

 

 ドラマでは、「のぼせもん※」俊之の様子を面白おかしく、時には人情話も交えて描いていますが、モデルである俊夫氏の明太子への思い入れも、実際に相当のものでした。今もふくやさんに受け継がれている「商売人は消費者の代表」「卸売りはするな」という遺言は、「ひと一倍の人想い」と称された氏の懐の深さから生まれた哲学でした。原作本には、氏の人間性や商売人としての様子が、丁寧に描かれています。ぜひとも、映画と合わせてご覧になられて下さい。

 

※「のぼせもん」とは、博多弁で「夢中になる人」を意味します。博多華丸演じる主人公の俊之は、人助けや明太子づくりへの「のぼせ」が過ぎて、常に「ふくのや」のトラブルメーカーです。