第53回『これからどうなる日本経済!悲観バイアスに囚われない景気論』

 今回は、久留米大学商学部教授の塚崎公義先生にご登壇頂きました。先生は、昨秋『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由(河出書房新社)』を上梓され、そのポジティブかつ徹底したロジックによる経済予測の解釈は、現在各所で話題となっています。

 今回の勉強会は、その最新本の内容をダイジェスト的に取り上げたわけですが、主に5つの質問から塚崎理論の神髄を垣間見ようとする試みとなりました。

 

 特に「なぜ少子高齢社会で景気は回復するのか?」という質問は、この本の要となるテーマですが、「少子高齢に端を発した、深刻な労働者不足が失業を減らし、かつ人手を確保するために労働環境の改善がなされる。生活の質はさほど向上しないが、失業による社会へのネガティヴな見方は減る。将来に希望が持てれば、景気は上向く。」という解釈は新鮮でした。しかし、人口減で消費が冷え込んだ結果、生産調整による人員削減の可能性もあるのでは?とお尋ねしたところ、「需要はなだらかに減っていくが、それ以上に供給側の生産力が急激に落ちていくので、常にモノ不足が生じ、その可能性は極めて低い」とのこと。

 

 後半は、「現状において、値上げは経済的に良い影響をもたらすだろうか?」というテーマで、3つのグループに分かれてディスカッションを実施しました。総評としては、ほぼ全員が値上げを経済的に是としながらも、「なぜその価格なのか」という説明責任を、企業はしっかり果たすべし、という意見に集約されました。

 

 「メディアは悲観的な話が好き。我々は常にサングラスを掛けるよう求められている状態。GPIFの短期的な運用報告ひとつを取ってみても、利益が出た際の報道は小さく、損失が出たら大きく流す。様々なモノの見方を提案したくて、この本を書きました。」というメッセージを残して、塚崎先生の白熱教室は幕を閉じました。