『ビジネス寓話50選~物語で読み解く、企業と仕事のこれから(博報堂ブランドデザイン編/アスキー新書刊)』は、多様な会社・団体のブランディング構築を担ってきた編者が、それを実現するうえで活用してきた寓話※の中でも、特に「未来のビジネスへの兆し」を顕著に読み取ることが出来るエピソードに関して、独自の解釈を交えて編纂した選集です。
寓話というと、どうしてもイソップ物語のようなものを想像しがちですが、本書に掲載されている寓話の中には、行動科学や認知科学の事例から、ビジネスヒントを得ようとする試みも見られます。ここでひとつ、『教授と助手のゲーム』という寓話をご紹介しましょう。
飛行機で移動中の教授と助手が、退屈しのぎにゲームを始めます。交代でクイズを出し合い、答えられなければ、相手に罰金を支払うというもの。助手が負ければ、5ドルの罰金を教授に支払います。しかし教授は、自分が負けたら、ハンデとして50ドルを助手に支払うと宣言するのです。さて、最初のクイズは教授から。助手は全く答えられず、教授に5ドルを支払います。次は助手の番。
「丘に上がる時は3本脚、降りる時は4本脚。さてこれは?」
教授は必死に考えましたが、ついに答えられないまま、目的地に着いてしまいます。教授は50ドルを渋々助手に支払い、「正解はなんだったんだ?」と尋ねます。すると、助手は黙って5ドルを教授に支払ったのでした。
いかがですか?これは、「クイズを出す人は、正解を知っていなければならない」という思い込みを試された、トラップだった訳です。
正解のない問題を出した助手をペテン呼ばわりするのは簡単ですが、しかしながら、現実にはビジネスの世界ひとつ取っても、このようなことは日常茶飯事であったりします。思い込み(前提)に囚われない考え方は大切ですね。
50の寓話には、前述の「囚われない」というキーワードの他にも、「スピリッツ(使命)」「共創」に関するテーマが満載です。人生やビジネスへの処方箋が必要になったら、軽く手に取ってパラ読みされてはいかがでしょうか。
※寓話(ぐうわ)とは、比喩によって人間の生活に馴染みの深いできごとを見せ、それによって諭すことを意図した物語。(参照元: Wikipedia)
コメントをお書きください