第60回『香港での起業から見えるもの。経済とお金、そして人生のこと。』

今回は、渡辺大輔有限公司代表の渡辺大輔氏にご登壇頂きました。渡辺氏は、香港在住の起業家で、愉景灣社中(Cipango DB Co. Ltd.)というコンサルティング集団を率いています。国際金融都市・香港を足掛かりにした、日本の中小およびベンチャー企業等の海外進出プロジェクトを支援するのが彼らの仕事です。

 

2015年に香港で起業する以前は、福岡県庁職員として、福岡県香港事務所の所長職などに従事していました。氏が県庁に入庁したのは96年。当初から一貫して福岡県の水産行政に携わってきましたが、その手法はいずれも型破り。05年には、県庁職員としての立場では関われない支援もあることに気づき、「地元の美味しい魚がいつまでも食べられる仕組み作り」を目指して、『福岡お魚応援団』を設立。ボランティアとして国内外における県の海産物アピールに取り組みます。やがてその活動が拡がるなかで、彼の視点は海外へと向けられていくのです。その経緯は、著書『落ちこぼれ役人香港に行く(梓書院刊)』で知ることが出来ます。

 

香港と福岡県は、2011年に県が主催した『辛亥革命※100周年記念事業』を契機として、経済的な密接度を深めていきます。当時、このイベントを担当した渡辺氏。以降も、深く香港に通じるうちに、海外展開を検討する日本企業にとって、いかに香港の地の利人の利が、拠点としての有効性に富んでいるかを、強く認識していきます。

 

また、香港に移って以降は、ある重大な懸念が、彼の使命感を後押しします。それは海外の伝統的な巨大資本の大きなうねり。仮に、今後の日本経済に破綻の危機が及んだ際、その資本が流入し、経済的な独自性を保てなくなる恐れがある。その時に、海外法人として体力を蓄積した日系企業が多数存在すれば、日本人の手で経済を建て直すことも可能かも。その機会に備えての支援がしたい。彼は、その日の為に今を生きています。

 

※辛亥革命は、1911年に中国(当時は清朝)で発生した共和革命。その首謀者である孫文は、福岡の政財界人との交流が深かったとされています。