今回は、人生にもビジネスにも役立つ、モノの見方をレクチュアしてくれる本のご紹介です。その本に接しながら、ある短編漫画を思い出しました。藤子・F・不二雄先生が70年代後半に発表した、『大予言』という作品です。
マジシャンが、師匠である老占い師のもとを訪ねます。占い師が何か重大な予言をして、ひどく怯えているというのです。どんな予言をしたのかと聞くと、予言などはしていないと言って、一冊のスクラップブックを手渡す占い師。そこには、エネルギー危機や複合汚染、人口爆発に世界大飢饉など、近未来への警告を示す新聞雑誌の切り抜きが貼られていました。「自分たちの滅亡を予言されて、取り乱さないでいられるみんながこわい!」と、彼は狂乱するのです・・・。もし、占い師が今回紹介する本を読めば、数十年後の世界の事実に、少しは安心することでしょう。
『ファクトフルネス(ハンス・ロスリング他2名著/日経BP社刊)』は、スウェーデンの教育者であるハンス・ロスリングが、ファクトフルネス(事実に基づく世界の見方)の啓蒙活動の集大成として著した本です。その活動の発端は、90年代後半に遡ります。ハンスが優秀な大学生に三択クイズ形式で出題した「世界の事実」に関する問題。その正解率がことごとく低かったのです。しかし、その正解率の低さが大学生のみに限らないことを、後に彼は嫌というほど実感します。世界を舞台に活躍する優秀な経営者や学者の集まりでさえ、正解率が30%を超えるクイズはごくわずかでした。この状況を危機的と見て、彼のファクトフルネスの研究や啓蒙は進展していくのです。
例えば、前述の老占い師の危機意識は、今を生きる私たちの中にもあるのではないでしょうか?しかし、ハンスに言わせれば、占い師の懸念を杞憂と言うかもしれません。電気の利用だけで言えば、世界中で使える人々の数は増え続けています。複合汚染は減り、子供の人口は、2100年も現在と同水準の20億程度と予測されています。世界中で農作物の収穫量は60年代と比較して3倍に増えました。
世界は良い方向に変化しているのに、それを理解していない人が多いのは何故か。この本には、その原因と考えられる「悪しき思い込み」を、10の本能になぞらえて説明しています。ぜひご一読を。
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