第61回『衰退業でもお客様が増え続ける、小さな会社のNo.1商品の作り方』

今回は、有限会社ワカナクリーニング代表取締役の若菜真一氏にご登壇頂きました。福岡市薬院に店舗を構えているワカナクリーニングは、1934年に創業。現在の三代目店主が若菜氏です。クリーニングの需要は、92年の8千億円強がピークでしたが、直近のデータではその半分以下の規模。衰退業と云われる所以です。その中でも若菜氏のお店は、メディアに注目される程の活況振り。昨年は創業以来、最高の売上を記録しました。

 

全くの異業種で働いていた若菜氏がお店を継いだのは七年前。父親の突然の死がきっかけでした。お店を継ぐことを決めたのは「家業が嫌いだったから」。幼い頃から、朝も夜もなく働き詰めの両親の姿を、つらい気持ちで見ていました。しかし、いざ跡を継ぐかどうするかという立場に立った時、彼は、祖父や父が時間を掛けて育て維持してきた、お店の重みに気づきます。前職で得た「困りごとをこなす人間は重宝がられる」という教訓も脳裏に浮かびました。なんとか生活を楽にしつつ、家業を成長させる道はないものか。今の自分なら、実現出来るかもしれない。そう前向きに捉えたのです。

 

それからは、同業者の仕事を「知る」時間に多くを費やします。その訪問数は100社を超え、また6人の師匠を得て、研鑽を重ねました。目的は、「敵がいない市場を作る」ため。次第に、『シミ抜き』技術の分野に活路を見出します。

 

また、店舗展開においても、チャレンジングな戦略に打って出ます。それは父親の代に6店舗あった店舗数を減らし、本店に経営資源を集中する策でした。クリーニングは、お客様と仕上がりの価値観を合わせる作業が大切。きめ細やかなコンサルティングは必須。それをご理解頂けるお客様に、よりよいサービスを提供したいと考えたのです。

 

物事の「本末」をわきまえ、「足るを知る」ことで本質に近づこうとしている若菜氏の哲学に触れた勉強会でした。