私たちは、日常的に様々な思い込みに囚われていたりします。
「医療検査(ドック)は高額なのが当たり前」、「セキュリティサービスは法人あるいは富裕層向けのもの」、「オーダーメイドは、お金持ちだけのサービス」等々です。
一見常識的な見解に潜んでいる「ちょっとした違和感」をスルーせず、アイデアソースに落とし込んで、マスの市場に新しいビジネスチャンスを見出す。そんな挑戦を続けている起業家がいます。元(株)バンク(現在は解散)代表取締役の起業家、光本勇介氏です。著書『実験思考(光本勇介著/幻冬舎刊)』には、そのような彼の思考プロセスが、過去に手掛けたサービスの開発事例も含めて、とても興味深く描かれています。
光本氏が、リリース当初から世間を驚かせたサービスに、即現金化アプリ『CASH』があります。ユーザーは、現金化したいモノ(ブランドもののファッションアイテムやグッズ)の簡単な情報をアプリ上で選択し、現物を撮影します。すると瞬時に買取査定額が表示され、ユーザーが了承すればアプリに買取金額がチャージされます。モノは、期日内にユーザーが『CASH』に発送します。17年6月にサービスがリリースされ、情報がSNS等で拡散されると、瞬く間に買取希望の登録件数が増え、すごい勢いで会社の口座から出金が発生。24時間経過後には、3億円強のお金が消え、さすがに恐怖を感じて、システムを一時休止したのだそうです。
氏にしてみれば、このサービスはある仮説と性善説に基づいた「社会実験」の一面もあったそうです。なんとも凄まじい実験です。ちなみにこのサービスは、今現在もなお稼働しています。ビジネスとして通用しているのですね。
ちなみに、この本自体も「実験思考」の一環としてリリースされました。出版社から執筆の依頼が来た際に、「ありきたりの出版では面白くない」ということで、読者が一通り読み終えた後で、自由に値付けをする企画を盛り込んだのです。電子版については無償で頒布し、当初のペーパー版については、印刷に掛かる経費の390円で販売しました。その結果については、こちらをご覧下さい。
彼のビジネスに対する姿勢は一貫しています。すべては「社会実験」の一環で、その化学反応を実感出来るのが楽しいのだと。そして、この先の見えない混沌の時代、「実験思考」を出来る人のみが、世の中を楽しめるのだと主張します。この本の中身は、そんな刺激的なヒントに満ち溢れています。
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