波乱の経営者人生を支え続けた、若き日の師匠、寅さんからの学び。

日本人の国民的映画と言えば、必ず名前が挙がるのが山田洋次監督・渥美清主演の『男はつらいよ』シリーズですね。昭和44年に第一作が封切られて以来、その人気は今も衰えていません。昨年末には、50作目の新作も劇場公開され、世間の話題となりました。

 

主人公寅さんを最後まで演じ、平成8年に他界された渥美清さんと、20年の長きに渡って親しく交流されてきた、ある経営者の回想録を読みました。『寅さんから学んだ大切なこと(皆川一著/Nanaブックス刊)』という本です。

 

皆川氏は、現在建築関係を中心に手広くご商売をされていますが、中学卒業から二十歳までは、渥美清さんの付き人をされていたそうです。人見知りの印象が強い役者・渥美清ですが、皆川さんと一緒にいる時だけはおしゃべりが好きだったらしく、寅さんさながらに、皆川少年に人生の機微などを語って聞かせていました。

 

皆川氏は、成人すると渥美さんのもとを去り、ご自身で舞台製作の会社を起業しますが、順調だった経営はビジネス拡大が仇となり、93年に破綻します。億単位の借金を抱え、保険金で返済しようとして自殺未遂。その後は自己破産に追い込まれてしまいます。

 

再起を図る皆川さんを支え続けたのは、少年時代に何気なく聞いていた渥美さんの言葉の数々でした。いくつかご紹介しましょう。

 

  • 【いいか、「いざ」というときは一日に五回はある。その「いざ」ってときが人間大事なんだよ】 一日五回、覚悟を決めて生きてきた渥美さん。肺結核で片肺を失い、常にいつ終わるとも知れない人生を意識していました。
  • 【「約束」と「掟」をな、上手に使い分けるんだよ】渥美さんにとって「掟」とは、「覚悟・本気」の代名詞でした。
  • 【一生懸命を見抜く力を持て】人は一生懸命なフリをして自分自身を騙す。自分を騙していないか?本当に一生懸命か?
  • 【泣き泣き笑い、泣き笑い。泣いて笑って夜が明ける】どんなに辛いことがあっても、必ず夜は明ける。ならば、思い切り泣いて最後に笑えばいい。