世界中を感動させたペテン師ミュージシャンが、最後に辿り着いた本物の幸福。

もし、この世界から突然にビートルズの存在と音楽が消え、彼らの楽曲を再現出来るのが、あなただけになってしまったら?そんなパラレルワールドに迷い込んでしまった、売れないミュージシャンの不思議体験を描いた作品が、昨年公開のファンタジー・コメディ映画『イエスタデイ(ダニー・ボイル監督)』です。

 

イギリスの小さな田舎町で暮らす青年ジャック。昼間はスーパーマーケットのパート勤め。夜は地元のお店の舞台に立ち、自作曲を披露する日々。しかし、自身の才能に限界を感じてきてもいます。そんなジャックを献身的に支えるのが、幼馴染で中学教師のエリー。彼の音楽に惚れ込み、マネージャー業に余念がありません。

 

ある夜、世界規模の大停電が発生し、帰宅途中のジャックは、真っ暗闇のなかで、トラックに撥ねられます。大怪我を負った彼ですが、幸い命に別状はありません。退院したジャックを、エリーをはじめとした仲間たちはお祝いします。退院祝いにもらった新しいギターで、お礼にビートルズの『イエスタデイ』を弾き語るジャックですが、仲間たちは、まるで新鮮な音楽でも聴くような表情です。

 

ビートルズの話題にも全く反応しない仲間たちを奇異に感じた彼は、まさかと思いつつインターネットで、『ビートルズ』を検索するも、出てくるのはカブトムシの画像ばかり。なんと、あの夜の事故を境に、ビートルズの存在はこの世界から消えていたのです。ビートルズの曲を誰も知らない世界。演奏出来るのは、この世で自分だけ。ジャックは、ビートルズの曲をわがものとして発表することで、出世の野望を抱きます。

 

ジャックの計画は功を奏し、彼が披露する(ビートルズの)曲は、次第に世間の話題に。やがてそれは、当世随一の人気スター、エド・シーラン(なんと本人出演です!)の耳にも留まることになります。

 

ジャックの歌に魅了されたエドは、躊躇なく彼を引き立て、あっという間に世間は彼をスターダムの座に押し上げますが、同時に彼には罪の意識が芽生えます。迫り来る重圧とストレス。心の平安を取り戻すため、超意外な人物の助言を得て、彼が取った行動とは?

 

幸福の定義は人それぞれ。でも、その答えは、結構シンプルなところに落ち着くのかもしれません。