この一年間、随分と窮屈な思いをされた方も多かったかと思います。かつてのように、大勢の親しい友人や仲間たちと濃密な時間を楽しんでいたあの頃が、夢のように思い出されることも。
今回ご紹介する映画『ザ・プロム(ライアン・マーフィー監督)』は、そんな現実の窮屈さをほんの少しの間忘れるにはもってこいの作品です。現在は動画配信サービス『Netflix』でお楽しみいただけます。
かつての人気舞台俳優、ディーディー(メリル・ストリープ)とバリー(ジェームズ・コーデン)は、新作舞台で共演し、その成功を確信していましたが、メディアの評判は芳しくなく、落ち込んでいました。人気を挽回する策として、ふたりが思いついたのは、慈善活動を装った売名行為。そこに、万年コーラスガールのアンジー(ニコール・キッドマン)と、ジュリアード卒しか誇ることがない三文役者のトレント(アンドリュー・ラネルズ)が乗っかります。
ツイッターで見つけたネタは、インディアナ州に住む女子高生、エマに関する話題。卒業間近の彼女は、自らがゲイであることをカミングアウトし、プロム(卒業パーティー)には、カップルで参加することを表明。しかし、保守的な彼女の街は、PTAを中心に彼女の主張を受け入れず、一方的に会の中止を決定したのです。
自らのプロムに、苦い思い出を持つゲイのバリーは、この話題に怒り、早速仲間とともに、エマの住む街に乗り込んで抗議を行うものの、事態はますます混乱状態に。しかし、良識を持つ校長のトム(マイケル・キー)が州検事に働きかけたことで事態は収拾。プロムは開催されることになります。
最初は下心まるだしで慈善活動をしていた4人も、「ただ恋人と踊りたいだけ」という真摯で無垢なエマの気持ちに心を動かされ、次第に自身の過去のトラウマともそれぞれ向き合いつつ、寛容の精神を取り戻していくのです。しかし、プロム開催当日、事態は思わぬ方向に。果たしてエマは、恋人とダンスを踊れるのでしょうか?
原作は、2016年に初演された人気ミュージカルですので、映画も、もちろん歌と踊りが満載。プロム会場で大勢のダンサーが踊る様子はまさに壮観。束の間、窮屈さを忘れられることでしょう。
コメントをお書きください