なぜ彼らは紛争地域で生きることを選んだのか。戦場のなかで見出した絆とは?

 

2015年公開のスペイン映画ロープ 戦場の生命線(F・レオン・デ・アラノア監督/ユニバーサル・ピクチャーズ配給)は、95年ユーゴスラビア紛争停戦直後の農村地帯で活動する、国際援助活動家たちのとある日常を、やるせない乾いた笑いとともに描いた作品です。日本ではあまり話題にはなりませんでしたが、なかなかの佳作。役者陣も結構豪華です。

 

ベテラン国際援助活動家で、チームを率いるマンブルゥ(ベニチオ・デル・トロ)は、村にひとつしかない井戸のなかで、死体と格闘しています。住民が大切にしている井戸に、何が目的なのか、国連軍兵士の死体が投げ込まれたのです。

 

早く引き揚げ作業を行わないと、井戸水が腐敗して住民にとって死活問題になる。ところが、死体は肥満体のうえに水を吸って、かなりの重量。引き揚げの最中、その重量に耐えきれずに、唯一のロープが切れてしまいます。

 

マンブルゥは、相棒のビー(ティム・ロビンス)らとともに、ロープを探しに他の農村を当たりますが、なかなか見つけられない。なんとか辿り着いた雑貨屋でロープを見つけるも、外国人には売らない素振り。ビーたちを取り囲む住民たちの目は冷たく、殺気立っています。「外国人は戦争を連れてやってくる」。そう言いたげな表情でビーたちを睨みつける住民たち。

 

国連軍に死体除去を打診するも、動きは鈍い。彼らは地雷撤去に忙しく、取りつく島もありません。新人活動家のソフィが、なんとか巻き込もうと、「死体は地雷を抱えている」とウソをつきますが、これが、その後大きな仇となってしまいます。

 

過去にマンブルゥと恋仲だった紛争審査分析官のカティヤ(オリガ・キュリレンコ)は、停戦下にあるこの地域から撤退するように、彼らに要請します。異常な日常に慣れてしまっている彼らの精神状態を懸念する気持ちもあります。

 

井戸水の腐敗は、刻一刻と進みます。彼らは無事にロープを見つけ、死体を引き上げられるのでしょうか。

 

常に命の危険に晒されているマンブルゥやビーが、なぜ紛争地での活動にこだわるのか。彼らがそこで見出した絆とはなんなのか。 

問い掛けつつ観てみると、意外な味わいがあるかもしれません。