私が今の(お金を扱う)仕事を選んだきっかけが、失業中に目指していたFP資格取得での過程にあったことは、このレターに長くお付き合い頂いている方には、ご承知の向きも多いかと思います。
FP資格を学ぶまでは、お金のことを、生活に必要なものだと理解しながらも、漠然と「汚いもの」と考えがちな人間でした。しかし、勉強をしているうちに、「お金ほど人間のさまざまな思いがこもった物質はない」ということに気づき、さらには、ひとりの人間のお金に対する意識の持ち方が、想像以上にその生き方や哲学に大きな影響を及ぼしていることを、遅まきながら学んだのです。
では、なぜ若い頃の私は、お金に対して積極的に接することを、「汚い」と感じていたのか。先日、とある事業家の方の記事を目にして、その理由のヒントを得ることが出来ました。その事業家とは、株式会社eumo(ユーモ)代表取締役の新井和宏さんです。
新井さんがご自身の事業を通じて目指しているテーマは、かなりチャレンジングなもの。それは「共感資本主義」の実現。現在の資本主義の世界に、もっと人間同士の共感(つながり、応援)に重きを置いた価値基準を導入する取り組みです。それにより、行き過ぎた「お金による経済合理性の追求」から脱却し、共感が社会の発展をけん引する「心があたたかい経済」への変革を目指していく、とのこと。
新井さんが、お金との付き合い方について、最も意識されているのが、「活きたお金の使い方」をしているかということ。「自分らしく生きるうえで、意味のある使い方であるかどうか」。それが判断基準になっています。お金に込める意味として、「将来に向けた(他者との共感につながる)関係性を築ける」ものであればお金を使うし、逆に「今だけの(自分の)損得」のみを勘定にいれているならば、使わない。
なるほど、私が若い頃に意識していたお金の姿は、後者に偏った側面しか、見えていなかったのですね。
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