ロシアのウクライナ侵攻を発端とする戦争が膠着状態です。
難民生活を余儀なくされてしまったウクライナ市民や、国の自治存続を守らんと日夜戦場を奔走する正規兵、慣れない銃を手に戦う国民義勇兵のみなさんのもとに、一日も早く望んだ平和が訪れますよう、願ってやみません。
今や戦時の大統領となったゼレンスキー氏は、ロシアの暴挙と非道、そして各国からの支援を、精力的に国際社会に呼びかけています。その徹底抗戦の姿勢と強いメッセージは、同時に国民の愛国心をも鼓舞しているようです。
特に、今月初旬にイギリス議会で行ったオンライン演説でのメッセージが印象に残っています。氏は、世界最大の軍隊を有する占領者から自分たちの自由を守ることを「決してあきらめない」と表明し、「我々は森の中で、野原で、海岸で、都市や村で、通りで、丘で戦い続ける」と訴えました。
演説内容に強く胸を打たれたイギリス国民は多かったことでしょう。それはかつて、自国をファシストの魔手から守るために尽力した、あの偉大な戦時宰相の言葉をなぞったものだったからです。
今回の映画『ウインストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男(ジョー・ライト監督/フォーカス・フィーチャーズ他配給)』は、第二次世界大戦の渦中にあり、窮地に追いやられたイギリスを舞台に、ナチスドイツとの徹底抗戦を声高に主張した宰相チャーチルの姿を描いた作品です。
1940年5月。ヨーロッパ戦線におけるナチスドイツの勢力拡大は留まるところを知らず、フランス陥落も目前に迫っていました。その頃、イギリスでは政界一の嫌われ者が首相に任命されます。
マイペースで偏屈者。彼の名は、ウインストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)。ナチスドイツの侵略行為に及び腰と見られた前政権から一転して徹底抗戦を主張しますが、議会で彼の持論を支持する仲間は多くありません。
戦況は著しく悪化し、大西洋に面したフランス領ダンケルクでは、30万人の英陸軍兵士が追い詰められていました。彼らを助けるために侵略者との交渉に応じるか、それとも自分の信念に従うか。チャーチルの自信は揺らぎ、苦悩は大いに深まります。
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