「刺され、誰かの胸にー」。 過酷なアニメ業界で展開される、勇気と再生の物語。

数年前のネットニュースで、日本のアニメ業界を代表する、大手制作会社のスタッフ募集広告が話題になりました。

 

日本のアニメ制作現場に憧れる若い外国人が、これを見てあまりの薄給待遇に驚いたという内容でしたが、これは、アニメが日本の文化として市民権を得はじめた数十年前から、ずっと言われてきたことです。

 

薄給、長時間労働、使い捨て体質。劣悪な労働環境を指摘され続けてきたアニメ業界。今や日本のアニメ産業は、市場規模2兆円強を誇るコンテンツへと成長したというのに、その担い手であるスタッフさんたちの待遇が一向に改善されないという事実に、業界存続の危機すら感じてしまいます。

 

しかしながら、そんな業界だと知りつつも、アニメーターを志す若者は引きを切りません。名の知れた制作会社の競争倍率は、200倍強と云われています。彼らをアニメ制作へと突き動かす原動力とは、一体何なのでしょうか?

 

今回ご紹介する映画『ハケンアニメ!(吉野耕平監督/映画「ハケンアニメ!」製作委員会・東映配給)』には、その答えがたくさん詰まっています。アニメ製作には、多くの人間が様々な思惑で関わりますが、結局のところ、この映画のキャッチ「刺され、誰かの胸にー」に凝縮されるのではないでしょうか。

 

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斎藤瞳(吉岡里帆)は、新人アニメ監督としてのデビューを控えています。国立大を卒業して県庁職員となるも、アニメ業界に転職した変わり種ですが、瞳には人知れず作品に賭ける、強い想いがありました。プロデューサーである行代とともに準備を進めますが、商業的な成功に邁進する行代との間には、衝突が絶えません。

 

一方、瞳の作品と同じ放送時間帯には、他局でファン垂涎の話題作品が予定されていました。それを監督するのは、若きカリスマ・王子千晴(中村倫也)。前作から8年の沈黙を破っての復帰作品であり、ファンの期待は嫌がうえにも高まりますが、その舞台裏は危機一髪の混乱状態。わがままで傍若無人な王子の扱いに、プロデューサーの有科は手を焼いています。

 

さて、最高視聴率を稼ぎ出し、ハケン(覇権)を掴むアニメは、どちらの作品か!プライドを賭けた胸アツの激闘がはじまります。