鳥と一緒に空を飛びたい!夢を叶えた冒険家の実話に基づく、奇跡の旅の物語。

カリガネという渡り鳥がいます。主に北極圏やロシア、スカンジナビアで繁殖し、冬が近づくとヨーロッパや中国大陸などに南下、越冬する習性があります。

 

渡り鳥は、数千キロに及ぶ行程を何カ月も掛けて旅するわけですが、途中で羽を休める森林湖水地帯は、今や温暖化や乱開発による環境破壊が進み、且つ過度な狩猟などもあって、彼らにとって安息の地とは言えない状況になっているそうです。実際、ヨーロッパではこの三〇年間で、総数の三分の一にあたる4億羽以上の野鳥が消えたとされています、カリガネも、絶滅危惧種に指定されました。

 

1995年、自然保護活動家で冒険家のフランス人男性クリスチャン・ムレク氏は、この事態を憂慮し、ある壮大な計画を実行します。それは、自身が親鳥となって渡り鳥たちと飛行し、彼らを比較的安全な飛行ルートへと導いてあげること。そのために彼は、鳥と同じスピードで長時間飛べる超軽量飛行機(ULM)を開発し、また鳥たちと親子としての絆を形成するため、ふ化前の状態からあらゆる仕掛けを試み、ついには成長した渡り鳥とともに2千キロの旅を成功させました。

 

今回ご紹介する映画『グランド・ジャーニー(ニコラ・ヴァニエ監督/SNDフィルムス他制作、クロックワークス配給)』は、ムレク氏の実話に父子の絆というエピソードを織り交ぜて作られました。CGなしで撮影された、鳥たちと並んで滑空する飛行シーンは、あまりにも美しく感動的です。

 

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気象学者でありながら、フランスのカマルグという田舎で渡り鳥の研究をしているクリスチャンは、今まさに絶滅寸前のカリガネを救う一大プロジェクトを実行しようとしていました。

 

最初は父親の研究に無関心だった息子のトマも、ふ化したばかりのカモの子どもたちに一目ぼれ。父とともに親鳥に扮して、一緒に飛び立つ日の準備に夢中です。

 

やがて成長した鳥たちと超軽量飛行機(ULM)をトラックに積み込み、親子はスカンジナビア半島へ。ここから飛行機に乗り込み、鳥たちを引き連れてフランスを目指すのです。ところが予期せぬ展開で、トマがただひとり、鳥たちを率いて飛ぶことに。親子にとって大波乱の旅がはじまりました。