海外で「いつもの生活」。あえて準備し過ぎない、自分磨き旅のススメ。

最近、テレビの歌番組でやたらと米米CLUBの『浪漫飛行』を耳にすることが多いのですが、私の気のせいでしょうか(笑)。ウィズコロナの生活も新しい局面に入り、円安傾向ではあるものの、「そろそろ、我慢していた海外旅行を楽しんでみたい」と検討を始めた方も多いかもしれません。『浪漫飛行』がよく流れているのも、そんな世の中の気分を映し出しているのかもしれませんね。

 

私の海外旅行経験は、修学旅行時の韓国を除けば一回きり。新婚旅行を兼ねたヨーロッパくらいなのですが、思い返せば事前準備から大変だったような気がします。さらに現地に到着したら、「あの名所に行かなきゃ。あの料理を食べなきゃ。お土産はこれを探さないと」なんて具合に、あまりにも欲ばり過ぎてしまい、いま振り返ってみると、「落ち着いて旅を味わう余裕がなかったな」というのが正直な感想です。旅慣れた人ならばともかく、こんな経験をされた方は多いのではないでしょうか。

 

今回ご紹介する『人生はどこでもドア リヨンの14日間(稲垣えみ子著/東洋経済新聞社刊)』の著者である稲垣さんも、会社員時代に後悔の多い海外旅行を繰り返してきたのだそうで、その反省点から、視点やアプローチをがらりと変えた旅を実践してみたのだとか。本書はその体験談です。

 

稲垣さんは、テレビのワイドショーなどで、よくお見かけします。アフロヘアがチャーミングな方ですね。朝日新聞で記者などをされていましたが、50歳を契機に早期退職。以降の人生で最もやりたかったことのひとつが「華麗なる海外暮らし」でした。独身無職の身、いつでも実行出来るという思いはあるものの、実は外国語が苦手。まずは語学留学を検討していたところ、次々と仕事の依頼を引き受けてしまい、機会を逃してきたのだとか。気負いもあったそうで、「ちゃんと準備せねば」という発想が、さらに腰を重くしていました。

 

これでは、いつになっても夢を叶えられない。焦った彼女は発想の転換を試みます。あえて準備をせず、「普段の自分のまま、ひょいと海外へと降り立ってみる」。東京での日常とリズムを、新しい土地に数週間持ち込んでみよう。観光客ではなく、土地の人間に混ざるようにして生活しながら。言葉の壁はあっても、まずは「人間力」なのだと。

 

旅先に選んだのは、フランスのリヨン。さて、リヨンの街と人は、果たして彼女を暖かく迎え入れてくれたのでしょうか?