「一度きりの人生で何をやりたい?」その質問が、再び彼女を大海原に導いた。

「生涯現役」を標榜する私ですが、年齢を重ねるごとに、あらたな一歩を踏み出すことに躊躇する瞬間が増えているようです。

 

踏みとどまることの言い訳を、つい年齢に求めてしまうことも。やってみなくてはわからないのに。前に進む勇気を失ってしまったら、「生涯現役」を貫くなんて、まったくもって虚言です。

 

そんなふうに自身の不甲斐なさを嘆いていた最中、今回ご紹介する映画に出逢いました。大いに励まされ、且つ背中を押されました。

 

今年の秋に劇場公開された映画『ナイアド~その決意は海を越える~(エリザベス・チャイ・バサルヘリィおよびジミー・チン監督/ブラック・ベア・ピクチャーズ製作、ネットフリックス配給)』は、64歳でフロリダ海峡180キロの遠泳横断に挑戦した実在のマラソンスイマー、ダイアナ・ナイアドの偉業を描いた物語です。

 

負けず嫌いで頑固。自分の夢にかけては忘却無人な一面すら隠さない彼女。一方で彼女の熱量や意思の力が、人々を引き寄せます。

 

前人未踏の挑戦を終えて、群衆に語りかける言葉が印象的です。「三つのことを言いたい。絶対にあきらめないこと。夢を追うのに年齢なんて関係ない。そして、(この挑戦は)個人競技だと思っていたけど、チームスポーツよ!」。

 

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かつては有名なマラソンスイマーであり、現役引退後はスポーツキャスターとして活躍してきたダイアナ(アネット・ベニング)も、今は60歳のおばあちゃん。

 

ところが、母の遺品整理をしている最中に手にした詩集の一編が、彼女の昔の夢に火を付けます。「一度きりの人生で何をやりたい?」。彼女にとって、それは明確でした。28歳の頃に挫折を経験した挑戦。180キロにおよぶ、遠泳でのフロリダ海峡横断です。

 

ダイアナは、パーソナルコーチで親友のボニー(ジョディ・フォスター)に応援を求めますが、ボニーは「あり得ない」の一点張り。しかし、本気でトレーニングに励むダイアナの姿を見て、ボニーはこのプロジェクトに参加することを決意するのです。

 

ふたりの熱意がスポンサーを動かし、いよいよチームは大海原へ。さまざまな危険が潜む海で、チームの果敢な挑戦が始まりました。