今回はトピック「世界中で愛されているサンタさん。その正体とはなにかを考えてみる」でとりあげた映画『三十四丁目の奇蹟(ジョージ・シートン監督/20世紀フォックス製作配給)』をご紹介します。
1947年に公開され、以降映画だけでも4回にわたってリメイクされた作品ですので、ご存じの方も多いでしょう。私自身は、1994年のリメイク版(クリス・クリングル役のリチャード・アッテンボロ―が、なんともチャーミングで秀逸でした!)ではじめてこの物語を知り、今では愛すべき大切な作品のひとつです。
この物語は、原作者のヴァレンタイン・デイヴィスによって映画用の脚本として書きおろされ、映画化決定とほぼ足なみを揃えるようにして書籍化もされました。
デイヴィスは、当時のアメリカで商業化が甚だしかったクリスマスの様子に幻滅し、この物語を思いつきます。作中ではそんな世の中の風潮に対する批判精神も発揮しつつ、クリスマスとは一体どのような祝祭であるべきなのかを、丁寧に観客に問うています。
目には見えない大切な価値を信じるまごころ、想像力の大切さ、その先にもたらされる奇蹟。おもわず納得させられる語り口が特徴的な作品と云えるでしょう。最初の作品と1994年版では、ほぼ同様の設定で物語が展開しますが、法廷でサンタの存在が肯定されることになるヤマ場のエピソードは、まったく異なります。どちらも面白いので、見比べてみるのもよいかもしれません。
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クリスマス商戦のパレードで賑わうニューヨーク。
サンタクロースのように立派な髭をたくわえた恰幅の良い老人(エドマンド・グウェン)は、ひょんなことから、百貨店のサンタ役に選ばれます。買い物客に好意を以て迎えられた老人ですが、その履歴書の姓名欄には「クリス・クリングル(サンタの別名)」、出身地には「北極」と記されていました。
老人を採用した人事部長のドリス(モーリン・オハラ)は困惑しますが、社長は老人の機転に大喜び。百貨店は、彼の人柄とその機転を生かした商法で、世間からおおいに支持されるのです。
しかしながら、老人を精神異常者として追放しようとする卑劣な罠が、彼を待ち受けていました。
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