このトピックを目にされる頃、多くのご家庭がクリスマスを愉しまれていることでしょう。25日の朝、目が覚めたとたんに、サンタさんからの贈り物をさがすお子さん(だけでもないでしょうけど笑)のご様子。まさに目に浮かびます。
「サンタクロースさんっているんでしょうか?」。
1897年の米国。8歳の少女がニューヨーク・サン紙の投書欄宛に、このような書き出しの手紙を送りました。サン紙の編集者は、この手紙を紙面に紹介するとともに、感動的な回答を社説に掲載しました。それを読んだ当時の読者は、記事を大いに話題にしたのだそうです。
「この世の中に、愛や、人へのおもいやりや、まごころがあるのとおなじように、サンタクロースもたしかにいるのです」。
この記事が元ネタになって、クリスマス文学の傑作で何度も映画化された、『34丁目の奇蹟』が誕生したのだとも云われています。
いまや世界中のいたるところで親しまれているクリスマス。
この祝祭が普及する過程の歴史を紐解いてみると、南北戦争後の米国に大きな契機があるようです。
当時の米国、特にニューヨークでは、文化や商業の街として飛躍的な経済成長を遂げる半面、市民の間では、経済的な格差による分断が拡がりつつありました。先に大陸に渡って経済を興した「旧移民」が、南北戦争後に入植してきた「新移民」を、労働力として安く酷使する。次第にその構図は、富める「旧移民」に対する貧しい「新移民」の憎悪へとつながっていきました。
その懐柔策として、また新国家における精神的統一のシンボルとして、「旧移民」のなかの知識人たちが考案したイコンが、「クリスマス」であり、「サンタクロース」であったという説があります。
クリスマスの精神は、宗教や格差などによらず、「他者を尊重し、おもいやる」という理念のもとに拡がっていきました。その精神性こそが、さまざまな垣根を越えて、世界中で受け入れられた所以でしょう。そこには、人間に潜むある種の神性が宿っているのではないか。サンタクロースとは、その善意の結晶として存在するのではないか。そんな思いが静かに湧きあがります。
とはいうものの、今も世界は戦禍の渦中。
鉛色の空を滑るソリから、砲弾と悲鳴が飛び交う地上の様子に、悲嘆しきりのサンタさん。大きな胸も張り裂けんばかりでしょう。
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