世界初のスマートフォンの成功と凋落は、創業者たちに何をもたらしたのか。

優れたビジネスアイデアや技術は、開発者の熱狂的なこだわりや夢、絶え間ない挑戦から産み出されます。その開発過程は、おおらかな遊び心に満ちていて、多くの産みの苦しみとわずかな喜びをともに味わいながら、仲間としての絆を一層深めたりします。

 

しかしながら、それだけではサービスが世界に注目されることはありません。そのサービスや製品にイノベーショナルな価値を見出した、商売やお金のプロフェッショナルたちの大きな支援が得られてこそ、はじめてその存在はビジネスとして成立するのです。

 

但し、その結果が開発者(創業者)に恩恵をもたらすのかどうかは、また別のお話。さまざまな欲に翻弄された彼らの純粋な夢は、やがて思いもよらぬ変化を、彼らに強いていくこともあるのです。

 

今回ご紹介する映画『ブラックベリー(マット・ジョンソン監督/XYZフィルムズほか製作・配給)』は、スマートフォンの元祖とも云われるブラックベリーを産み出した実在の開発者たちと、その普及に携わったビジネスマンたちの成功と凋落を、ときにはコミカルに、やがて悲惨さを込めて描いた伝記的な作品です。先進的な技術を有していたブラックベリーは、なぜ後発のiPhoneに駆逐されてしまったのか。その理由を考察するうえでも、大変ヒントになる映画作品でした。

 

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1996年のカナダオンタリオ州。ふたりの若手技術者と仲間たちが、新しいガジェットの開発に熱中していました。代表者のマイクが目指していたのは、電話機にコンピュータを取りこみ、電子メールも送受信出来る手のひらサイズの機器。高校時代の恩師からのアイデアがヒントになりました。ビジネスパートナー獲得のため、幼馴染のダグとともに営業に勤しむマイクですが、残念ながら全く成果を得られません。

 

そんな時、あるビジネスマンが彼らのアイデアに着目します。大手商社の役員を務めていたジムは、剛腕を発揮して、瞬く間にマイクの会社の指揮官に。世界初のスマートフォン『ブラックベリー』の販路開拓に成功するのです。

 

会社が急成長する一方で、創業メンバー同士の関係性や社内の雰囲気は、微妙に変化していきます。

 

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