この十年間、起業をテーマにした勉強会(ビジ×もん勉強会)を主催するなかで、さまざまな起業家さんにインタビューを行いました。勉強会には「起業家のヒーローズ・ジャーニーを表現する」という主題があるので、そのインタビューの切り口は、現在の事業内容のみならず、彼らの起業における動機やミッション、それまでの人生遍歴などにも触れます。
稀に私の質問に答えていただくなかで、「自分がやってきたことにはそんな意味(あるいは視点や切り口)もあったのか」と、ご自身の回答に驚かれるケースもありました。彼の人生に、新たな物語が書き加えられた瞬間です。
私が今まで接してきた起業家さんのなかには、そのビジネスを立ち上げられた動機として、人生における印象的なつまずきを打ち明けられる方もおられました。その時に感じた後悔や不満、あるいは感謝や悲しみの気持ちを世に問う(あるいは示す)かたちで起業を決心された方たちです。
米国の著名な作家であり、ライフストーリーの専門家でもあるブルース・ファイラーは、最近の著書『人生の岐路に立ったとき、あなたが大切にすべきこと(髙橋功一訳/株式会社インプレス刊)』のなかで、「(価値感と社会的課題が多様化した複雑系の現代社会では)成人は平均的に1年ないしは2年に1回、人生の破壊的要因に遭遇する」と述べています。
「人生の破壊的要因」とはなにか。
本書で何度も出てくる「お伽噺につまづく」という表現のほうが、彼らしいかもしれません。氏が云うところの「お伽噺」とは、「自分の人生の物語は自分でコントロール出来る」という幻想を意味していますが、それを破壊する要因は人生のあらゆる機会に遍在します。自身の(仕事や性を含む)存在証明や健康問題、家族や友人などの不幸、さまざまな嫌がらせ、失業などによる経済的困窮。危機に瀕して、立ち止まったまま動けなくなる人も、少なくはありません。
氏は、そのような人生の岐路に立たされたときの再出発のヒントを、全米200人超、1,000時間にも及ぶインタビュー経験から、著書のなかでこのように表現しています。「少しのあいだ立ち止まり、頭のなかで語られる物語に耳を傾けてみよう(中略)それはあなたが何者で、どこからやって来て、将来どんな場所に行きたいと夢見ているかを語る(あなた自身の)物語」なのだと。
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