今年も瞬く間に日々が過ぎ去っていきました。目の前にある日常をこなすことに精一杯で、つい視野は狭くなりがちです。
年を重ねるにつれて日々の移ろいが早く感じられるのは、生活や仕事におけるルーティンが日常の大半を占めるようになり、新しい発見や驚きに接する機会を疎かにしてしまうからなのでしょうか。そういう意味では、丁寧に時間を掛けて上達するような習い事に勤しむというのは、日々に新鮮さをもたらしてくれるものなのかもしれません。
今回ご紹介する2018年公開の映画「日日是好日(大森立嗣監督/ハピネット・ヨアケ他製作、東京テアトル・ヨアケ配給)」は、そのような習い事の典型とも云える「茶道」を主題にした作品です。森下典子さんのエッセイが原作で、二十歳の入門から25年間にわたる人生の機微が、茶道からのまなびを通じて描かれています。
タイトルとなっている「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」は、禅語(禅問答)の公案(課題)であり、言葉どおりに解釈すると、「毎日がよい日」ということになりますが、幾とおりにも解釈が可能な、なかなかに深みがある言葉のようです。映画を鑑賞し終えた私は、某人気テレビ番組の「ボーっと生きてんじゃねーよ!」というキャッチが頭に浮かびました。
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二十歳の大学生、典子(黒木華)は、母親のすすめで茶道教室に通うことに。一緒に通う同い年の従姉妹、美智子(多部未華子)の積極的なひと言がきっかけでした。
茶道教室の武田先生(樹木希林)は、温厚で上品ながらも指導は厳しい。まるで意味不明な茶の作法に、ふたりは戸惑うばかりです。美智子は「これって形式主義では?」と異議を挟みますが、先生は「なんでも頭で考えるから、そういうふうに思うんだね」と、まったく意に介しません。
やがてさまざまな人生の節目を経験するふたり。三十路を迎えた典子は、自分の人生に満足出来ないでいます。一方の美智子は、商社に就職後、結婚や出産も経験。自分の居場所をしっかりと築いている様子。美智子は先へ先へ行ってしまう…焦燥感に打ちのめされる典子の身の上に、さらに人生の大きな転機が、容赦なく訪れます。
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